『やさしくしないで』
彼が僕の頭をぽんぽんと撫でる。
安心感と嬉しさを覚えるのと同時に、焦りのようなものが湧き上がってくる。
僕は葛藤していた。
彼を殺さなければ。僕の本当の目的はそれだったはずだ。
一刻も早く殺して、彼から姉を奪うんじゃなかったのか。
殺さないと。
殺さなければ、この地獄は終わらない。
なのに、なんで。
何故殺せない。
僕の計画は完璧だし、準備も整っている。
後は行動に移せばいいだけ。
それなのに、直前になって、いらない感情が邪魔をする。
彼ともっと一緒にいたい。
彼を、殺したくない。
こんなことを思うなら、最初から彼と話したりなんてしなければ良かった。
自分でも呆れるぐらいの誤算だ。
これ以上優しくされたら、揺らぎはじめた僕は多分、彼を殺せなくなってしまうだろう。
だからもう、やさしくしないで。
2/3/2025, 11:29:45 AM