黄桜

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ふと、思ったことがある。過去に起きた出来事を話す大人達に共感を求められた時、私にはその記憶そのものがなかった。ただ、その時の話は私がまだ1・2歳の時の話だったこともあり思い出せなくても何ら不思議ではないと考えていた。けれど、心の何処かで自分がおかしくなっているのではないかという不安は拭えないままだった。
そして、その不安が確信に変わる出来事があった。父が酒を呑んでいて口が緩んだのだろう。昔話を持ち出してきたのだ。父いわくその時の話は私が10歳の時の事らしかった。母も父も妹も弟もその出来事の記憶があるようだった。だけど、この時の私は酷く取り残された気持ちでその話を聞いていた。
なぜなら、私にはその記憶がなかったからだ。この時、私は気づいた。自分が記憶障害を患っていることに。私だけがそこにいない、その事実に絶句する事しかできなかった。

過去の自分を大事にしたい、けれど、そこに私がいない。

お終い

9/20/2023, 1:55:00 PM