さよならは言わないで
切り絵で作られたクリスマスツリーを飾る。
7年目になる習慣だ。
毎年飾り終えると丁寧にしまっておいたせいか、最初のころと変わらぬ美しさだ。
漆黒の夜に金と白のツリー達。細部を眺めていると時が経つのを忘れてしまう。
あのとき彼女はわたしに本当のことを教えてくれなかった。ただ美しい紙をそっと差し出して、これを飾ってほしいと告げた。
わたしが喜んで飾りつけた3日後彼女は去った。後にはきらびやかな紙と気の抜けた日々が残された。
もう会えないとわかっていても毎年飾りつけるのをやめられない。木々の細かな細工の間から人懐こい瞳の彼女がこちらを覗いているかもしれないから。
切り絵に負けない美しい羽の持ち主の彼女は、これからもわたしのこころで生き続けていく。
12/3/2024, 11:49:47 AM