飯井 さけ

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マンションの屋上から見た夜明け前の空は、何か新しい物語が始まりそうだった。今みたいに一人で眺めるのもいいし、裕二と二人で見に来るのも、ザ・アニメの青春といった雰囲気が好きでよく来ていた。昨日も、いつものように期末テスト終わりの裕二とこっそり部屋を抜け出して、軽く雑談を交わしながら、お互いに持ってきたジュースとスナック菓子を食べていた。そんな時だった。

「なあ、俺死ぬんだ。明日」
裕二が死ぬと言った。ような気がした。聞き間違いかと思って「え、なんて?」と僕は慌てて聞き返した。すると、裕二はぽりぽりと袋から取り出したお菓子を食べながら、一度空を眺めて、それから僕の方を見て言った。
「明日死ぬ予定なんだ。いや、日はとっくにまたいでるから、今日死ぬ予定って方が正しいかも」
やっぱり死ぬと言っていた。しかも今日だった。



【夜明け前】フィクション作品 #4

9/14/2023, 5:27:39 AM