ドドド

Open App


         夜の海。

遠くで、漁火が見える。

防波堤に打ち付ける波の音が
僕の鼓膜を揺らし

ぼやけた水平線を歪ませた。


入水。

苦しい死に方の一つだと言う。

しかし、上手く行けば片付ける必要もない
自然に帰る事のできる死に方。


僕が一歩踏み出せば、何もかも
沈める事が出来る。


さよならは残してきた。
何時でもいける準備は終えている。


波に身を委ね、数分苦しめば
ここ数十年の地獄から開放される。


わかっている。

それで楽になれる。


しかし、足は震え
悲しい気持ちで一杯になる。

何故、こんな事に。

そんな気持ちが溢れていく。


遠くで犬が吠えている。

野犬は危険だなと
車に戻る。


そこで一服。


遠くに漁火が見える。

波の音は聞こえなくなった。


夜の海。
その誘いは、僕にはまだ勇気が足りないみたいだ。

冬になったら、また来よう。

8/15/2024, 11:46:16 AM