泣いている子がたくさん居るこの教室の中で、最後の会話をしている卒業生達。
「はぁ…まじで卒業したくないよぉ…ほんとに大好き、ずっと一緒にいてくれてありがとう…」
汚い涙を流しながら下手なスクールメイクを崩している一軍女子達。
「あはっ!お前ガチえぐいって!…こうやってお前らとふざけられんのも今日が最後かー、マジで今までありがとな!笑」
最後までふざけながら阿呆面を晒すように下品に笑っている一軍男子達。
ブレザーに付いているネームプレートの「3-1」の文字が赤く刻まれている。
対して思ってもないような感謝の言葉を次から次へと口に出しているお前らに寒気がする。
窓側の席に大人しく座り、外を眺めているあの子。
胸元に付いている赤色のコサージュが太陽に照らされ、少し光って見える。ポリエステル…の生地だろうか。外なんか眺めて…きっと儚い系女子にでも憧れているのだろう。勘違いも大概にしてほしい。
教室の隅で小さく笑いあっている陰キャの男子達。
もっとハキハキ喋られないのかな。何を言っているのか聞こえない。社会に出たらすぐ潰されて終わりなんだろうなぁ。可哀想。
メガネを外し、静かに泣いている教職員の人達。
''お気に入りの''生徒と話して感極まっているのだろうか。こんなんで泣けるんだ。
そんなことを思っていると、顔も名前もわからない、というか、存在感がない先生が黒板に何かを書き始めた。
「最後の課題 幸せになりなさい」
それを見たみんなが目に涙を浮かべ、手に持っている卒業証書をぎゅっと力強く握りしめた。
「先生からは以上です。みんな、幸せになるんだよ」
そう言い、笑顔になった。嘘笑いだろうか。
ネットで拾ってきたであろうテンプレートすぎる言葉。
幸せになりなさいだなんて、無責任なことをよく言えるなぁ、その左手の薬指に付けてる指輪も2つ目だろうに。1回女に捨てられているところを想像すると気分が良くてにやけがとまらない。
この空間にいる全員、泣いたり笑ったりしていて本当に馬鹿馬鹿しい。
みんなを鼻で笑い、自分の机に座った。
目の前には……なんだっけ、これ。
名前が思い出せない。白色と桃色の…ひらひらしたもの。透明なガラスの容器に反射した私。
胸元にコサージュはなかった。
まぁそんなものつけたくないからちょうどいいけど。
首あたりが何故か苦しい。呼吸がとてもしずらい。
ワイシャツのボタンを1つ外したのだが、まだ苦しい。
首元にきつく巻かれている季節外れのマフラーを少し緩めた。
雲一つない天気のせいで太陽がよく出ている。
光のせいで目が痛くなりそうだったから右を向いた。
目を開けると、みんなの横にある影が私にだけなかった。
あ、そっか。私ってもうこの世にいないのか。
テーマ 幸せに
作品名 独り言
※本作はフィクションです。
※登場人物の思想は作者の考えを反映するものではありません。
3/31/2026, 12:01:50 PM