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『どこにも書けないこと』

どこにも書けないこと、なんていうものは、多分この世に存在していないんだと思う。

実際僕は、誰にも言えないと抱え込んできた秘密も、表立って口にするのは憚られると飲み込み続けてきた不平不満も、あの人への叶いもしない恋心だって全部、日々の記録とともに日記帳の中に書き記している。

要するに、書けはするのだ。行き場のない想いを言葉にして、文字として綴ること自体はいとも簡単に出来てしまうのだ。それがどれだけ酷い内容であろうが、くだらないことであろうが、文章として残すことにはなんの問題もない。

でも、多分多くの人は、どこにも書けないことを腹の中に抱えている。というよりは、抱えているように感じている。
けれどそれは、正確には『どこにも書けない』のではない。
『どこにでも書けるが、誰にも見せられない』もの。
それが、僕たちが『どこにも書けない』と感じるものの正体。

だから、僕は思うのだ。飲み下して溜め込んだ負の感情をどこにも書けない、誰にも言えない。そう嘆く前に、一度、目の前にまっさらなノートと一本のペンを用意してみて欲しい。誰にも言えないのなら、せめて自分自身にだけ見えるような場所に、文章として残してみて欲しい。

きっとそれだけで、心は軽くなるから。

2/7/2024, 3:19:41 PM