さゆ

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「刹那」

「好きです!」
あぁ、まただ。また、この目だ。この目にはもう飽きた。
“俺”ではない何かを見ている目。
その目は確かにキラキラはしているが、俺には澱んで見える。
きっと上手くはいかないだろうと分かっていても、
「いいよ」
上辺だけの笑顔を貼り付け返事をする。
「ほ、本当!?嬉しい!」
満面の笑みを浮かべたこいつはすぐさま携帯に何かを打ち始めた。
概ね、友達にでも報告しているのだろう。
今まで告白してきたどの女も、こいつと同じ行動を取っている。
こいつらにとって俺は自慢するための道具なのだ。
どうせ直ぐ別れる。そう分かっていてもどこか期待してしまう自分に心底呆れる。
「ねえねえ、聞いてる?」
さっき告白してきたこいつの名前は何ていうのだろうか。
名前も、学年も分からないこいつは友達に報告し終えたのか気味の悪い笑顔と甲高い声で俺に話しかけていた。
「あー、ごめん。聞いてなかった」
もー!と言いながらも楽しそうにしているのを見て、やっぱり気持ち悪いなと思う。
あぁ、今回もダメそうだ。

「刹那的な恋」

4/28/2023, 3:46:03 PM