太田エイ

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旅行の日に雨が降ってそれは雨男がいるからだ、誰それが雨男だ、いや雨女だみたいな会話は日常的なことで、なんの不思議もない。よくあることだ。ただ雨男にもランクがあって酷いのになるとその人のまわりだけ雨が降り続けるという超A級雨男もわずかに存在している。オカルトや都市伝説系でもあまり紹介されないのであまり知られていない。なぜ私がそれを知っているかというと、私がそうだからだ。

自分が雨男と気づくのは意外と遅い。というのもそれが当たり前と思っているからで、赤ちゃんの頃から自然とコントロールしてしまうからだ。おしっこは我慢できずにしてしまうが、雨だけは生まれてすぐに止められる。ただ気が緩むと雨が降るので、まあ、コントロールできていたかはよくわからない。母に言わせると、なんだか身体が濡れていることがよくあり、風邪ひかないようにすぐに拭いて着替えさせていたということだ。

青年の頃になると、雨の強さ、範囲をコントロールできるようになる。半径5メートルくらいに雨を降らせて、女の子を傘に入れてあげるという邪な優しさに使ったりもできる。これは雨男の特権であるが、他にいいことはあまりない。
その雨を我慢する緊張感は特に梅雨時に解放される。雨が降ってても目立たないいい季節だ。
また、天気予報の「ところにより雨」は、だいたい超A級雨男の仕業である。

その後社会に出て、自分の能力を使う者、隠す者様々な生き方がある。私は能力を生かすことを選び農地をまわる仕事に就いた。仕事と並行して必要な雨をサポートしていたのだ。人々に役立っている気がして満足した。

しかし、晩年は雨を我慢する能力が薄れてしまう。
それに気づくと、死を自覚して自然と山に登りたくなる。そして、ある程度登り、落ち着く場所を見つけてそこに留まる。もうそれは雨男の成れの果てであって、ほぼ人間ではない。
雨は降り続け、山に染み、また湧き出して名水になることもあるという。

今、私もこの場にじっとしている。
自分の降らせている雨が名水となることを願いながら。
結果はたぶんわからない。

3/25/2026, 3:12:12 AM