300字小説
雪夜の迷子
「肩まで浸かって、しっかり暖まるのよ!」
この雪の中、雪だるまの影でびしょ濡れで
『……双子のお兄ちゃんと離れ離れになったの……』
泣いていた子どもを風呂に入れる。
着ていた白いボンボンの着いた、真っ赤なセーターを洗い、乾かす。裾が引っ掛けたのか、ほどけ掛けている。私は家にあったピンクの毛糸を出すとほつれた箇所を繕った。
翌朝、ベッドに寝かせおいたはずの子どもが消えていた。慌てて捜す私の前を、小学生の女の子が走っていく。
雪遊びか、コートに手には白いボンボンの着いた真っ赤な手ぶくろ。
「今度は無くしてはダメよ!」
お母さんの声が追い掛ける。
「はーい!」
手ぶくろの端は、ほつれたのかピンクの毛糸で繕ろわれていた。
お題「手ぶくろ」
12/27/2023, 11:53:15 AM