クロノネコスキー

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それは突然だった。

なんの前触れもなくその雨は全てに降り注いだのだ。

どこかで怒号が起こりあたりは喧騒に包まれていた。

(なぜこうなった!?)

こうなる事はある程度予測できたはずだった。

俺たちなら止められたはずだ。

なのになぜかそれをしなかった事にも問題はあったと思える。

だが現実としてそれは既に起きてしまっていた。

俺は息を整えあらためてその舞台となった場所を見た。

そして気づく、(あれ?あそこは...)

不意に見えた一筋の光に俺の腕は吸い込まれるように伸びていた。

揉み合う仲間たちの視線もその手の先に集まっていた。

もう少し、あと一瞬でこの手はそれに届く!。

そう誰もが息を飲んだ瞬間、

ジャっと幕が開き彼が現れたのだ。






『すみません、ほかのお客様のご迷惑になりますので、もう少し声を抑えていただけると...』

腰の低い店員さんが申し訳なさそうに注意してきた。

俺は付け合せの野菜の下敷きになっていた唐揚げを箸で持ち上げ、店員さんが『ありがたいのですが』と言い終えるのを待たずに「すみません。」と頭を下げた。

立ってもみ合っていた姿勢のまま仲間たちも
『あ、すみません』と姿勢をなおしながら
それぞれに頭を下げて座り直した。

そして店員さんが去ると始まるさっきの続き。

『おまえ、レモンかける?とか先に聞けよ』
『いやみんなレモンかかった唐揚げ好きだろーよ?』
『あたしそーゆーデリカシー無いのキラ〜イ』
『僕は別にどっちでもいい。』
「まぁ、俺もどっちでもよかったんだけど...」

そう言いながら俺はGETしたレモンのかかってない唐揚げを口に頬張った。

まぁ、ほのかにレモンの味はしたけど...。

結局、みんなレモンのかかった唐揚げを普通に食べて完食していた。

そんな飲み会の話。

あ、あと店員さんが開けたのは『幕』ではなく『暖簾』だったことだけは訂正しておこう。






11/5/2023, 10:50:26 AM