récit

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たそがれ爺さんは、どこぞの木の上に住んでいる。

爺さんは独り木の上で一日中新聞を隅から隅まで読みふけっている。
時事ネタに関してはコメンテーター顔負けだ。

夕暮れ時に爺さんは、人々がスマホを見ながら道を急ぐ姿を、木の上から見つめている。
人々は迷子のように自分の中に足りないものを感じている。

その時、たそがれ爺さんは、彼らの背中に灯りをともすように、読み終えた新聞を放り投げる。

それはバサバサと音を立てて人々の頭に落下し、黄昏の一瞬の道しるべとなる。

そして彼らはスマホをしまって淡々と岐路につくのだった。

「たそがれ」

10/1/2024, 10:37:39 PM