ミミッキュ

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"もっと知りたい"

「ほら、帰ったぞ」
 そう言ってハナの身体を片手で支えながらジャケットのファスナーを開けてハナを床に下ろす。軽やかに床に着地してみせると、こちらを振り向いて「みゃあ」と少々興奮気味に鳴いてきた。『今日も楽しかった!』って言っているのだろう。
 相変わらず何にでも食いつくが獣医曰く、そろそろ趣味趣向が出てくる頃だ。
 好きな玩具や遊びは分かっている。けど、他の好みや苦手は何だ?
 ジャケットを仕舞ってハナを頭上に持ち上げる。
「お前は何が好きなんだ?」
 聞いてみるが、人間の言葉が分からない上に話せない生き物に聞いたって、まともな答えが返ってくるはずもなく。こちらを見ながら不思議そうに「みゃあ」と鳴くだけ。
──動物相手に何聞いてんだ、俺。
 自分への嘲笑を漏らしながらハナを抱きしめる。ハナの喉の音が鼓膜をくすぐる。
「そろそろ飯の用意すっか」
 そう言うと、《飯》の単語に反応したのか「みゃあん!」と耳元で大きく鳴いた。驚いて思わず「うおっ」と声を漏らし一歩後退る。この食いしん坊モンスター……。
「大人しく待ってろ」
 ハナを床に下ろすと、自分とハナの朝食の用意に部屋を出た。

3/12/2024, 1:57:39 PM