【120,お題:太陽の下で】
一度で良いから、太陽の下で...
短冊にそう書こうとしてやめた、消しゴムを掴んで乱雑に紙を擦った
長さ10cmほどの紙がぐちゃりと歪む、無意識に浮かんだ涙で視界が滲んだ
やめとけ、どうせ叶わない
叫びだしたい衝動をグッとこらえて、外ではしゃぐ同い年の子供の声に耳を塞ぐ
鉛筆を机に叩き付け、病室特有の独特な匂いのするシーツを頭から被った
考えるな、考えるな、考えるな...考えるな...
考えるだけ時間の無駄だ、もっと有意義に使え
ただでさえいつ死ぬかわからない身体だ、こんな...こんな馬鹿げたことに時間を使うな
「...ッ...うぅ...」
アルビノ。正式名称は先天性白皮症、生まれつき色素が薄いのが大きな特徴
紫外線を防ぐメラニン色素というものが欠乏しているため、日に焼けた部位は赤く熱を持ち、酷い時は腫れ上がってしまう
生まれながらにして太陽に愛されなかったこの身体、自身の脆弱な肉体も相まって
幼い頃からずっと入院生活を余儀なくされていた
外に出るのを許されるのは日が落ちた夜のみで、それ以外は狭い病室に閉じ込められる日々
「何でだよ...なんで、ぼくばっかり...こんな...ッ...」
一度で良いから太陽の下で、皆と一緒に遊びたい
その願いを誰か聞き届けてはくれませんか
11/25/2023, 2:34:44 PM