六華

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『夢じゃない』

ずーっとやりたいと思ってたこと
それはバイクの免許をとること
原付じゃない ツーリングとかできちゃうやつ
誰かの後ろじゃない 自分で運転したかった
あんな不安定で重い物をうまく扱うことができるのか
きっと父親には反対されるに決まってる
説得する勇気はない
相談することもできない
わたしは誰にも言わずに免許をとると決めた

教習所に入っておどろいた
バイクを乗ったことがないのはわたしだけ
アクセル ブレーキ クラッチ ギヤ
両手 両脚 全部使う
走れるのか 止まれるのか 
倒すよな 起こせるのか
発進と停止を繰り返し練習
気がつけば教習時間も残りわずか
日は沈み あたりは暗くなったが
場内は照明に照らされて明るい
やるのか やらないのか
やるんだ…

エンジンの回転数をあげる
こけてもしゃあない
うそ 乗れてる?
マジか 自分で?
やったー! 何これー
ちょー気持ちいー!!
夢か現実か区別のつかない感情
大声で叫びたい
大丈夫かわたし
いや わたしは大丈夫だ

となりで服を脱ぎながら
バイクと並走してる
Tシャツ一枚で
「やったー!乗れたー!乗れたー!」
叫びながら並走してる
バイクではない
同じスピードで走ってる人
気がつけば 2人だけ

はじめてバイクに乗れた日
他人の幸せを本気で喜ぶ人に出会った
一生忘れることのない
夢のようなすばらしい光景

8/8/2025, 1:47:08 PM