あんず

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何もいらない


シロくんは優しい。

一緒にいるとお姫様になったんじゃないかって
思うくらい甘やかされている自信がある。

過去にこんなに優しくされたことがなかったから
初めは戸惑うこともあったくらいだ。

さりげなく車道側歩いてくれたり
飲みでもご飯でもリサーチ完璧だし、
とにかくこっちが気づく前に色々気がついて
サラリと自然に助けてくれるのだ。

「シロくんって優しいよね。」

ある日。
職場の仲間で飲んだ帰りに送ってくれるという彼に
酔いに任せて聞いてみた。

「え、俺すか?普通ですよ笑」

「いやいや。こんな優しい人会ったことないよ」

「ほんと?やった!」

「あはは笑」

「今度はちゃんと私がリードしていい飲み屋探さなきゃな!!」

「…」

「え?どしたの?」

シロくんが私の手を取っていた。
ドキッとして彼を見ると、彼は真剣な顔で

「俺は、杏さんになんかして欲しいって思ったこと何も無いよ。」

「あ、、そっか、ごめん、見当違いのこと言ってたかな?」

「そうじゃなくて、その、何にもいらないからさ」


真っ直ぐな瞳に撃ち抜かれそうになる。
ドキドキしながら続きを待つと彼は続けた。


「俺を好きになって。」




4/21/2024, 12:51:45 PM