300字小説
迷い鳥
登山遠足の昼休憩。山の奥からぎゃあぎゃあと鳥が鳴くような声がする。
「アレには昔、口減らしにこの山に捨てられた子が声が枯れるまで親を呼んで鳥に変わった、という伝承がありましてね。あの声を聞くと迷うと言われています」
捨てられたのに怖い話をつけられるなんて可哀想。私はリュックの、のど飴を山頂の祠に供えた。
中高年登山ツアーの昼休憩。山の奥から可愛らしい鳥の鳴き声が聞こえる。
「昔は人を迷わせるなんて怖い伝承のある鳴き声だったんですけど、最近では迷い人を麓に案内してくれる、なんて言われているんですよ」
秋晴れの下、紅葉に彩られた木々の奥から鳴き声が響く。
「のど飴が聞いたのかな?」
楽しげな声に私は耳を傾けた。
お題「声が枯れるまで」
10/21/2023, 11:04:48 AM