夏の暑さが僕を起こした。
クーラーをつけて寝たはずなのに、クーラーが消えている。きっと、お母さんが消したんだ。
(温度を23度に設定した僕も悪いとは思うが)
菓子パンで朝ごはんを済ませて階段を降りる。
「おはよう、母さん。」
「おはよう。あんた、クーラーの温度低くしすぎ。」
「次から気をつけるから、消さないでくれよ。」
母さんは家の1階で花屋を営んでいる。家の一階はそのこともあり、いつも花の香りがする。
「今日は部活ないから早く帰ってくるよ。
行ってきます。」
「あっお花、1輪持っていきなさい。」
母さんは僕に目の前にあった花を一輪差し出した。
「・・・いつもありがとうな。」
僕は花を受け取り、家を出た。
学校の途中の電柱に、僕は母さんからもらった花を添えた。これが僕の日課だ。
なぜかというと、ここは幼馴染の陽子が亡くなった場所だから。
陽子は交通事故でここから天国へと旅立った。
3年前の8月の、晴れた朝のことだった。
僕はいつも通り、学校に行っていて、この電柱の周りに人の集まりと、壊れた車と、陽子の鞄を見た。
「・・・もう、3年経つのか。」
毎年8月になれば、もう一度陽子に会える気がしてならない。
あの、少し右に寄ったポニーテールと、いつもヘアゴムがついている右腕をもう一度見たい。
僕の夏は、君なしでは語ることができないのだから。
8/2/2025, 9:47:00 AM