〝麦わら帽子〟
予告無しに送られてきた、段ボール。後日、母からメールが届く。
ちゃんとバランスよく食ってるよ。でもまぁ、値段高くて、同じ金額払うなら惣菜のでもいいやって感じではあったから。いろいろ気にして送られてくることに甘えと感じながらも、めちゃくちゃ助かる。
食材だけかと思ったら、写真が入っていた。撮影したらその場で現像されるカメラのやつだな。
白いワンピースを着た女の子。頭には麦わら帽子。周囲が田んぼ。どこで誰が撮ったんだよ。
スマホが鳴る。お盆だから会わないか? そういった内容が友人からきた。
駅で待ち合わせをして、そこからなぜか、自然豊かな方面へと行くことになった。
「何を思ってこんな炎天下を歩くはめに……」
「お前さ、中学のときに、かわいい女の子の写真、学校に持ってきたことあっただろ?」
「かわいい女の子?」
「ワンピース着てて、麦わら帽子の」
母が送ってきた段ボール。そこに入っていた写真を思い出す。
「夏休みの宿題だったやつか……よく覚えてるな」
「その女の子に会わせてくれる約束は、忘れた?」
「はぁ? そんな約束したか?」
友人はゲラゲラと笑う。
「ごめんごめん、マジにならないで。その時流行ってたネットの掲示板があるんだ。麦わら帽子を被った女の子が現れるって」
「都市伝説みたいな?」
「つーか、お前が持ってきた写真を見て、夏休み中に行ったんじゃないかって、俺は考えたわけよ」
ネットで噂されていた事柄に当てはまりすぎて、友人は僕が検証したんだとそう考えたわけか。
「お前はその女の子に、変な感じはしなかった?」
「普通に遊んでた記憶しかないかな。あとは宿題を手伝ってくれた事とか」
ひとつ違和感をあげるなら、「夏だけ、限定……みたいなことを言ってたかな」
「それはどういう……?」
「僕の解釈は、この場所に居られるのは夏までで、引っ越しするんだと思ってたから」
「あー、そういうこと」
いろいろ話しているうちに、目的地へとついた。お店兼自宅といった感じだろうか。一番に目についたのはシャッターがついてる建物、それからガラスの引き戸がついてる瓦の建物。
「勝手に入ったら不法侵入だよなー」
「自然崩壊しかかってるから、住んでないのは確実だけど、不法侵入だな」
友人と同じことを言い、開いてる部分から少し中を覗き込んだ。
「あれ、畳のところにあるやつ、麦わら帽子?」
友人が指差すところ、比較的きれいめに思えるのは……どうして。
すると隣からカシャッと音がした。友人は麦わら帽子を撮ったようだ。
「後日、なんか変化あったらヤバいな」
今日って心霊撮るために来てたの?
お盆休みが残り二日、友人から写真付きでメールがきていた。
麦わら帽子の近くに、白いモヤ……あの時一緒に過ごした女の子は……。
8/11/2024, 1:17:23 PM