香草

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「手袋」

5本指をそれぞれの穴に入れてグッパッと動かした。
一回り手が大きく無骨になったような感じがして少し嫌だ。グッと握りしめるとコートのポッケに入れる。
「準備できたよ」
妻が頬を両手で挟みながら小走りで玄関までやってきた。指が分かれていない、まあるい手袋だ。
萌葱色の手袋は妻の明るい笑顔によく似合っているし、小動物のような手が何かのゆるいキャラクターのように見えて可愛らしかった。
でもそれを直接言うのもなんだか気恥ずかしくて僕は「行こうか」とだけ呟いてドアを開けた。
慌てて靴をつっかけて僕の腕に手を回す。
少女のような手が必死に僕の腕を掴んでいるのを見ると胸の奥がキュンとなった。だがそれを悟られないように僕はポケットの中でぎゅっと拳を握りしめた。
妻はおもむろに僕のポケットに手を突っ込んだ。僕の手を無理やり開かせてふと言った。
「あ、これじゃ手繋げないね」
そして何の躊躇もなく可愛い手袋を脱いだ。少しぽったりした妻の指が姿を現す。
そしてまたポケットに突っ込むと指を絡めた。
僕は少し冷めてしまった彼女の手をすべて包み込めるようにぎゅっと指を伸ばした。

1/2/2026, 10:41:52 AM