わたあめ

Open App

目を覚ますと周りは白いカーテンだった。
カーテンを通してやわらかな外の陽射しが入ってくる。
「ああ、保健室だった」さやかは自分が保健室で眠っていたことに気がついた。頭も体もすっきりしている。
3時間目の体育の時間、急に頭がクラクラして立っていられなくなった。そのまま保健室のベッドに横になると熟睡してしまったようだ。
昨日の夜読んでいた本がおもしろくて、止められなかった。一気に読み終えて時計をみたら、夜の11時を回っていた。

さやかの目覚めた気配を察して保健室の谷本先生が声をかけてきた。
「橋本さん、目が覚めたの?大丈夫かな?」
「はい」さやかは小さな声で答えた。
「教室に戻れそう?」と先生に聞かれた。
体調はすっかり良くなっているので、授業に支障はなさそうだ。でも、教室には戻りたくなかった。どう答えたらいいか悩んでいると、
「お家の人に迎えに来てもらおうか?」と先生がやさしく聞いてくれた。

ーなんであんな意地悪な事を言ってしまったんだろう。
お母さんが迎えに来るまでの間、白いカーテンを見上げながら考えていた。
3時間目が始まる前の中休みの時間、さやかはとても機嫌が悪かった。クラスの男の子の騒々しさに腹が立ったし、女の子たちのにぎやかな話し声も鼻についた。そんな時、仲良しのかながさやかに話しかけてきた。
「見て、昨日お母さんに買ってもらったんだ」
そう言って髪飾りを見せてくれた。それは、さやかとかなが一緒にお買い物に行った時に2人でかわいいと言い合っていた髪飾りだった。さやかはなんだか羨ましい気持ちと悔しい気持ちがぐちゃぐちゃになって「似合ってない」と言ってしまったのだ。

お母さんが迎えに来て、一緒に家に帰った。
「体調良さそうじゃない?」家に帰るとお母さんに言われた。
「うん、お家に帰ったらなんか元気になった」
お母さんはくすっと笑ってから言った。
「お母さんもお仕事早退しちゃったし、スイーツでも食べに行こうか」

電車で5駅くらい離れたケーキ屋にいく。
私はいちごのパフェ、お母さんはチーズケーキを選んだ。
大好きな苺が沢山のっている。見た目もキレイ。
パフェは美味しいのに、お母さんとのお出かけで嬉しいのに、なんだかとても悲しくなった。心の底の方がずんと重たい。おばあちゃんの家で見たお漬物の上にのっている石が私の体に入ってきたみたい。

パフェを食べ終えて、かなに意地悪を言った事もズル休みをした事も全部お母さんに話した。
お母さんは黙って全部の話を聞いてくれた。
心の中の重石が少し軽くなった気がした。

次の日、かなちゃんが声をかけてきた。
「体調、大丈夫?」
私は昨日事を素直に謝った。
「昨日、意地悪言ってごめんね。髪飾り、とても似合っていたよ」
心の重石がとれた。

————————-
お題:カーテン

10/13/2024, 2:04:47 AM