かたいなか

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「以前は『衛星列車ともう一度巡り逢えたらどうする』みたいなハナシを書いた記憶がある」
「誰か」と、巡り逢い、
この人と巡り逢い「やりたいこと」、
巡り逢えたら幸運/悪運な「何か」、
巡り逢え、タラ。 巡り会えた、らっこ。
他に何か書けそうな案あったっけ。某所在住物書きは焚き火のアプリでパチパチ、ぱちぱち。
ものの試しで思考を文章化などしている。

個人的に欲しい「巡り逢い」は勿論宝くじ。
当たればガチャの自爆など気にもしないのだ。
勿論すり抜けも。確率操作を疑いたくなる結果も。

パチン。焚き火アプリの効果音が弾ける。
もう少し簡単に投稿しやすいネタと、複数巡り逢えたら、どれだけラクができることだろう。

――――――

前々回あたりから続いているおはなしも、これでようやく一区切り。
最近最近の都内某所、某深い深い杉林の中に、
「世界多様性機構」なる異世界組織が支援拠点を建てておりまして、その拠点を異世界人は「領事館」と呼んでおりました。

今回のお題回収役は、この「領事館」の新人さん。ビジネスネームを「アテビ」といいます。
アテビは滅んだ世界から脱出してきた、いわゆる異世界の難民。両親の故郷も、アテビの出身世界も、どっちも滅んでしまいました。
「領事館」の仕事ははアテビのような難民を、
密航の形で避難させて、その場所でまた生きてゆけるように、アレコレ、それどれ、支援すること。

故郷より開発レベルの劣っている東京に、アテビは去年赴任してきましたが、
フタを開けてみれば、あらあら、まぁまぁ。
東京には美しい花があり、物を大事に扱う文化があり、素晴らしい伝統が息づいています。

アテビは「藤森」という名前の現地住民から、この世界の美しさを教えてもらいました。
アテビはお礼に藤森を、
そうです、本当は、お礼のつもりだったのです、
藤森を、異世界の技術がたっぷり使われている、領事館に招待したのでした。

「藤森さん!耳!みみ、ふさいでください!!」
「えっ?」
アテビはそのつもりだったのですが、
アテビの上司――すなわち領事館長の「スギ」にとって、現地住民の藤森はいわゆる「駒」の候補のひとりに過ぎなかったようで、

チリン、ちりん。 チリン、ちりん。
スギは藤森を、無理矢理領事館の職員にしてしまおうとして、人の心を操る異世界アイテムを藤森にこっそり使っておったのでした。

「『闇堕ちの呼び鈴』っていうアイテムの音がします。聞いた者の魂を、闇堕ちで無理矢理こじ開けてしまうんです!耳ふさいで!」
「やみおち???」

にげて。 呼び鈴の音が聞こえないところまで。
アテビ自身も耳をふさいで、現地住民の藤森に力いっぱい叫ぼうとした、そのときです!

『――なるほどな、そういうことか』

ダーン!! ドォン!!
アテビと藤森と、それからアテビが居る部屋の、
両開きのドアが炎で弾け飛んで、
どん、ドスン。 どん、どすん。
轟音と業火と、それから煙を押しのけるように、
見覚えのあるドラゴンが、入ってきたのでした。

『世界線管理局、法務部のルリビタキだ。
現地住民拉致疑いの通報を受けて来たが、
どうやら、事実のようだな』

それは、アテビがまだ生まれていなかった頃、
「アテビの両親の故郷を滅ぼしかけたのだ」と両親自身から聞かされた悪竜に、
すごく、よく似たドラゴンでした。

世界多様性機構の新人アテビはこうして、
最初の赴任地で、両親の故郷の仇敵と、バッタリ、偶然、あるいは必然的に、巡り逢いました。

悪しきドラゴンが、藤森をくわえて、背中に放り投げて、領事館の外へ連れて行こうとしています。
アテビの両親の世界を滅ぼしかけた悪竜は、
アテビに東京の良さを、赴任世界の美しさを教えてくれた善き人たる藤森を、自分の巣に持ち帰って食べてしまうかもしれません!
「ダメ、だめ!!藤森さんを連れて行かないで!」
アテビは勇気を振り絞り、領事館の扉を壊したおそろしい悪竜にしがみついて叫びました!
「これ以上、誰の何も滅ぼさないで!」

『……だから領事館の緊急出動は俺じゃなくカナリアが良いと言ったんだ』
ああ、やはり、お前は「あの世界」の。
ルリビタキと名乗ったドラゴンは、アテビがどういう境遇か、よくよく察したようでした。
藤森を助け出そうと、背中によじ登るアテビを、悪しきドラゴンは振り落とそうとしますが、
『くっ、 この、』
藤森を助けたいアテビを、なかなか捕まえられず、

『仕方ない。このまま』
最終的に、アテビと藤森を背中に背負ったまま、
大きな翼を広げて領事館から、一気に、一瞬で、飛びたってゆきました。

悪竜と巡り逢ったアテビと、悪竜に捕まった藤森は、どうなってしまうのでしょう?
それは次回のお題次第。しゃーない、しゃーない。

4/25/2025, 3:34:32 AM