YUYA

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第四幕:真実への対決



檀野亮が次の標的と予想した光は、事件を止めるため、そして田村美咲が犯人かどうか確かめるため、彼女の動向を注意深く見張るようになっていた。彼は檀野にも危険が迫っていることを伝え、気をつけるように警告しておいた。しかし、もし美咲が本当に犯人だとすれば、復讐心に燃える彼女がどんな手段を取るかわからない。光は心のどこかで焦りを感じながらも、慎重に事を進める決意を固めていた。



放課後、光は学園の裏庭で田村美咲を見かけた。彼女は誰もいない場所に佇み、何かを考え込んでいるようだった。その横顔には、どこか悲しみと決意が入り混じった複雑な表情が浮かんでいた。光は意を決して、彼女に話しかけることにした。

「美咲、少し話をしてもいいか?」

美咲は驚いた様子で振り返り、光を見つめたが、すぐに表情を引き締め、何事もないかのように答えた。

「神崎くん?…どうしたの?」

「最近、学園で起きている事件について話があるんだ。君も知ってるだろう?」

美咲はその言葉に一瞬動揺を見せたが、すぐに平静を装った。

「何のことかわからないけど、私は関係ないわ」

光はその反応を見逃さなかった。美咲の中に何か秘めたものがあると確信した彼は、さらに踏み込んで話を続けた。

「君と葵が、去年の学園祭でいじめを受けていたことは知ってる。そのことが原因で、今の事件が起きているんじゃないかって考えているんだ」

美咲はその言葉に完全に表情を曇らせた。彼女は少しの間沈黙し、やがて重い口調で話し始めた。

「…あの時、葵は本当に辛い思いをしていた。私は何もできなくて、ただそばにいることしかできなかった。だけど、今でもあの時のことが心に残っていて、許せないんだ。あんな思いをした葵のことを」


光は美咲の言葉を聞きながら、彼女の中にある怒りと悲しみを感じ取っていた。美咲はさらに続けた。

「でも、私はこの事件の犯人じゃない。本当だよ、神崎くん。…ただ、犯人が誰なのか心当たりがあるの」

光は美咲の言葉に驚きながらも、真剣な表情で彼女を見つめた。

「それは…誰なんだ?」

美咲は視線を逸らし、少しためらいながらも、低い声で答えた。

「葵よ。彼女は今もあの出来事に苦しんでいるし、許せないって言ってた。私は彼女の気持ちを理解できる。でも、彼女が実際に行動を起こすなんて思っていなかった」

光はその言葉に衝撃を受けた。葵が真の犯人だという可能性が浮上した瞬間、これまでの手がかりが一つに繋がり、彼の中で事件の全貌が明らかになり始めた。



翌日、光は葵に真相を問いただすため、彼女を放課後の教室に呼び出した。葵は冷静な表情で現れたが、その目にはどこか覚悟を決めたような光が宿っていた。

「神崎くん、話があるって聞いて来たけど、何のことかしら?」

光は静かに、だが確固たる決意を持って答えた。

「葵、君が今回の事件の犯人だという証拠を掴んだ。君が学園祭での出来事を引きずり、あの時の実行委員たちに復讐しようとしているんじゃないか?」

葵はその言葉に一瞬目を見開いたが、やがて表情を緩め、苦しげに笑った。

「そうよ、神崎くん。私がやったの。でも、わかって欲しいの。私はただ、あの時の苦しみを忘れられなかっただけ…私が受けた痛みを、少しでも彼らに感じさせたかったの」

光は彼女の言葉を聞き、彼女が背負ってきた感情の重さを痛感した。しかし、彼は冷静に言葉を続けた。

「君が受けた苦しみは理解できる。でも、それを他の人にぶつけても、結局何も変わらない。誰かがまた傷つくだけだ」

葵は黙り込み、しばらくの間何も言わなかった。やがて彼女は涙を浮かべ、震える声で呟いた。

「私は、どうすれば良かったんだろう…」


光はそっと葵の肩に手を置き、彼女に優しく語りかけた。

「葵、君は十分苦しんだと思う。もう自分を責めるのはやめていい。過去を変えることはできないけど、未来はこれから変えられるはずだ」

葵は光の言葉に頷き、涙を拭いた。その表情には、これまでの怒りと悲しみが薄れていくように見えた。事件はこうして幕を閉じ、光は改めて人間の感情の複雑さと、他人を理解することの難しさを感じ取った。



エピローグ

葵は事件後、少しずつ周囲の人々との関係を見直し、再び学園生活に溶け込む努力を始めた。光もまた、事件を通して他人の心の痛みを理解することの大切さを学び、より一層冷静な視点で物事を見つめるようになっていった。

こうして、学園で起きた連続事件は終わりを迎え、それぞれの人物が新たな一歩を踏み出すこととなった。

1/10/2025, 1:41:18 PM