藁と自戒

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今年は、例年に比べて暖かな気候だったためか桜の開花がとても、とっても早かった。桜前線はみるみる北上して、卒業式に満開、入学式にはもう散ってしまうという、風情もくそも無い様子だ。そもそも卒業式、入学式ともに満開であって欲しという、
私の小さなエゴが悪さをしているのだが。
とにかく、今年の春は少し違った。

桜の花びらが舞い散る、
満開から少しすぎた頃の桜の木を
僕はぼんやりとながめていた。
「綺麗ですねえ」
後ろから春のような声がした。
このご時世に世間話を繰り広げるために他人に声をかける人は居ない。無視をしよう。そう思ったとき、
「今年は桜が咲くのが早くって」
「ええ、そうですね」
私の忍耐に問題があるのか、目の前に差し出された話題が魅力的だったのか、つい返事を返してしまう。
「あれ、あなたは私が」
「はい。見えますよ」
「みなさんは、そうではないみたいですが。今年は桜が咲くのが早くて残念だこのままでは入学式のころには散ってしまう。」
「入学式?」
「入学式って、ご存知ないですか。ほら、小学校、中学校とかの」
「ああ、入学式といえば桜という時代ではなかったですから」
「そうですか」
「はい」
「でも、こんなに早く桜が散ってしまうのは私としても残念ですねえ。こんなにも綺麗なのに」
「また、みれますよ」
「まあ、そうなんですけどねえ」
「よかったらご一緒に花見でもどうです?つまみでも買ってきますよ」
「あら、嬉しいお誘いですねえ。でも、」

突如風が吹き、桜は全て散ってしまった。
だが、私の中には今この瞬間、春が爛漫していた。
#春爛漫

4/10/2023, 1:50:59 PM