"君と一緒に"
──…〜♪
夕方、流れが途切れた為フルートと楽譜ノートを出して、久しぶりにあの曲──overtuReのアレンジに取り掛かる。
ここは医院で勿論診察室はあるが患者は基本、緊急通報で来る。救急部とほぼ変わらないから、来る時は来るし来ない時は来ないと言っていい程人の流れがとても極端なのだ。
以前までは途切れによって生まれた空き時間に小説を少し読み進めたり曲のアレンジをしたりしていたが、この所はハナの世話に当てていた為暫く楽譜ノートに触っておらず、フルートもたまに出す程度になっていた。
──ここの音は息継ぎの為に無くすか。
数小節ほど実際に吹きながら、楽譜ノートに音符を足したり消したりを繰り返しながら曲をフルートにアレンジする。いつものやり方だ。
──やっぱり難点は息継ぎ。アレンジ楽譜ができるまでですら、思っていたより時間がかかる……。
久しぶりにできると思って出したし、この曲のアレンジをなるべく早く済ませて練習をしたいが、やはり時間を作って専念した方がいい。
──ならせめて、息抜きにあの曲を吹こう。
息を吸ってあの曲──Brand New Daysを吹く体勢を作る。まだ業務中だから、サビのみの演奏。
──……〜♪
久しぶりに奏でる旋律に、胸が弾む。
「みゃ〜」
合いの手のつもりだろう、フルートの音に合わせてハナが鳴き声を出した。可愛い合いの手に癒されながらサビを吹き切って、フルートを仕舞いノートを閉じる。
──続きは夜に。
机の上に出したままにして、ハナの頭を撫でて診察室に戻り、定位置に着いて患者を待った。
1/6/2024, 11:49:49 AM