「傘の中の秘密」
お前の大きな傘の中でお前は俺に───
「うわぁ〜最悪だ。これから帰んのに、雨降ってきた。なぁ、誰か俺を傘に入れて〜?」
懇願する俺をよそに「はぁ?」「嫌だね。」「誰がお前とアイアイ傘するかっ」「走れ。」と、まぁ散々な言われようだ。
なんだか本気で泣きたくなってきた。
「…俺ので良ければ、入る?」
そう言ってきたのは昔からの腐れ縁のアイツだった。家も同じ方向だしちょうどいいか。
「おぅ!サンキュ。あんな奴らほっといてさっさと帰ろうぜ!」
俺は肩を抱いて、ヒューヒューと茶化す声を背中に受けながら帰った。
腐れ縁と言っても、2人きりになると何も話すことなく、終始無言の帰り道、もう少しで家に着く頃だった。
「…あ、のさ、好きな子とかいる?」
突然、訳の分からない質問に困惑する。
「は、はあ!?…いゃ、いない。つか男子校だと、出会い無くね?彼女とか欲しいよな…はっ!お前!もしかして、彼女いんの!?」
アイツは目をまんまるくして首を横に振った。
「いないいない!…好きな人はいる。」
「ほぇ〜、お前も隅に置けないな!どんな子?」
不意に傘を傾けられた。ちょうど俺たちの上半身を隠すように。
顔を思いっきし近づけられ、無意識に目をギュッと瞑る。耳元でアイツの声が聴こえた。
「…好きな子、君って言ったら受け入れられる?」
「……ッ!?」
その後の記憶が無い。
でも、これがきっかけで俺はアイツを意識し始めた。
6/2/2025, 11:35:33 AM