紗夢(シャム)

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【星空の下で】【沈む夕日】
【これからも、ずっと】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

3/25 PM 9:45

「わ~、やっぱり夜桜も綺麗だね~」

 桜を見つめながら、暁が踊るように
 くるりと一回転する。

 家から5分程歩いた所にある公園。
 昼間はグランドゴルフを楽しむ人や
 遊具で遊ぶ子供たちで賑わっている
 場所だけれど、今はアタシたち以外の
 人影は見当たらなかった。

「宵ちゃーん、ここに来て~。
 ――うん、ここだとお月様も桜も入るし、
 公園灯の光もあるし、いい感じ」
「また写真?」
「勿論! こんなに綺麗なんだから、
 桜も宵ちゃんも撮らないと!」

 そう言って、暁はスマホを向けてくる。
 指定された位置で空を見上げたら、
 公園の灯りで夜桜が淡く輝いているのも、
 桜と桜の合間から細い月が見えるのも、 
 風で花びらが舞っている様も、
 確かにとても綺麗だった。

「……わ! 見て~、真夜(よる)くん!
 もうこれ、エモさ200%じゃない?」
「ああ――良く撮れてる。
 宵が桜の妖精みたいだな」
「桜の妖精! ロマンチックな表現だねぇ」

 なんだか気恥ずかしくなるようなことを
 言っている気がしたけれど、
 気にしないようにした。
 きっと、これからも、ずっと
 暁は何かにつけて写真を撮るし、
 その度に真夜に感想を求めるから。
 いちいち気にしていても、キリがない。

「夜桜って不思議な魅力があるよね。
 なんていうか……妖しさ? みたいな」
「そうだな。昼に見る桜とは違う凄艶な
 雰囲気があるよ」
「そんな夜桜の下に佇んで語り合う
 少年少女。う~ん、シチュエーションが
 萌えを極めてるね!」
「アンタはすぐに萌えるって言うわね」
「えー? だって萌えるでしょ?
 桜の木と学生の取り合わせって
 様式美だと思うし。
 あ、真夜くんも撮るよー、
 視線はこの辺で――そうそう!」

 暁は今度は真夜を撮影した。
 取り終えた写真をチェックして、
 1人で満足そうに頷いている。

「あと萌えるシチュとしては、
 満天の星空の下で夢を語り合うとか、
 浜辺で海に沈む夕日を見ながら
 好きだー! って叫ぶとか。
 いかにも青春って感じで尊いよね」
「それが暁の望みなら、幾らでも叶えるよ」
「また真夜くんの優しさが発動してる!
 すごく嬉しいけど、好きだー! って
 叫ぶ真夜くん、想像出来ないかも」
「……まぁ、叫ぶかどうかはともかく。
 一緒に星空を見たり、沈む夕日を
 見るっていう、その状況は作れるから。
 そうだろ? 宵」
「……特に反対する理由はないわよ」
「~~~っ、もー、楽しみ過ぎるでしょー」

 暁が、アタシと真夜に腕を絡ませてくる。
 夜桜見物以外に、やるべきことが
 増えたのは確定だった。

4/11/2023, 4:36:57 PM