苑羽

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あの美しい夏の日、私は彼に出会いました。
貴方は精霊みたいね___私がそう口にすると、彼は微笑を浮かべました。それなら君は、お日様のような人だね。口数の少ない彼が不意に発する、淡く爽やかな言葉に、私は酔いしれました。

静けさがよく似合う人だったんです。木陰で、涼しげに詩集を眺める彼の姿は、まるで一つの絵画のようで。私は決まってその横に寝転び、頬杖をついてそんな彼を見つめていました。彼は私をお日様のようだと言ってくれましたが、私には彼しか見えていませんでした。みんなを明るく照らすことより、彼に寄り添い、彼に私だけをみてもらうことのほうが、よほど魅力的だったから。
でも、私の想いは彼を縛ってしまいそうで、怖くもありました。精霊は自由であるべきです。愛に溺れる彼も、それはそれは美しいでしょうけど、彼は私を充分に想ってはくれませんでした。
つり合いのとれない天秤は、無価値も同じ。不良品です。彼は私の前から姿を消しました。

一体どうしたんでしょう。愛に見返りを求めないことなど私には無理だったんだと、そこではじめて気がつきました。
最後の日、それは美しい夏の日でした。
「君と最後に会った日」

6/26/2023, 10:54:59 AM