黄桜

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母親のつけている香水は、私の鼻にはキツイようで、いつも息を止めなければいけなかった。そんな母親は、私が寝る前に仕事に行く。その時、母親はいつも決まった言葉を囁く。お姉ちゃんだから、我慢してねと。額に柔らかいものが当たる感触とリップ音が響いた。
これが終わると母親は、私に見向きもせずに玄関へ行ってしまう。その後はガチャンという音とガチャリという音がそれぞれ1回ずつ鳴った。私は、母親の存在が家から消えたことによって、心に穴が空いたような感覚にまた襲われるのを自覚した。

母親の香水は、私のためじゃない。

お終い

8/30/2023, 11:23:11 AM