駄作製造機

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【キャンドル】

ゆらゆらと揺らめく炎。
目の前にあるのは大好きなケーキ。

『お誕生日おめでとう!!』

たくさんの祝福を受け、火をフッと消し去る。
余韻の煙が揺蕩い、天井に昇って消える。

それと同時に目が覚める。
瞬間に漂う凶悪な匂い。

嫌な気分になりながら私は体を起こす。

『うぅ、、昔の夢見た。』

保存食を貪り食べ、ゴミは、、自分の良心が許さないからちゃんとゴミ箱に入れる。

『さ、、一狩り行きますかね。』

廃墟には、私の声がポツンと響かず残る。

バンバン!
ギャアアアア
グオオオォ

2025年、東京。

世界的に流行し、世界中の人々に恐怖と絶望をもたらしたウイルス。

20××年。

今では、ゾンビウイルスと化し、人工の大半がゾンビになっていた。

彼女はそんな中の生き残り。

数少ない食料と、劣悪な環境から彼女の命の灯火はもう少しで消えようとしている。

『はぁ、、寒くなってきたな、、。ゾンビも冬眠するかな。』

彼女は独り言を呟いて今日も眠る。

"これが夢であります様に。"

ーー

また、誕生日の夢だ。
昨日見た時より蝋燭の長さが小さい。

『おめでとう!』

幾分か小さい蝋燭は、私の前でゆらゆらり。

『、、、ふーっ』

私の息で炎は簡単に消え、真っ暗闇。

そして目が覚める。
また凶悪な匂い。

ゾンビ臭。

『はぁ、、これで最後か。』

最後の保存食を食べてまたいつものルーティン。
ゾンビ殺し。

初めて殺した時はグロさとキモさに吐き気を催したけど、大事な食料を吐き出すわけにもいかず、何とか我慢した。

でも2年も過ぎた今はもう慣れっこ。
家族だったゾンビを殺したけど、慣れっこ。
家族はもういないけど、慣れっこ。
慣れっこなんだ。

私は適応能力があるから。

『、、、おやすみ。』

もう、明日はないかも。

そう思い今日は寂れた家族写真におやすみの挨拶をキスをして寝た。

ーー

また、目の前には蝋燭が。
前の夢の時よりもっとずっと小さくなって、ゆらゆらり。

『お誕生日おめでとう!』

『、、、ありがとう。』

今日は違った行動をしてみよう。
どうせもう死ぬ。

保存食だけじゃ生きてけない。
栄養失調だし。劣悪環境のせいで体調悪かったし。

適応したのは心だけ。

『おめでとう。私。』

自分を祝ってあげる。

『ハハッ、、』

嘲笑しか出てこない。

蝋燭を、自分の手で削ってさ。
まさに飛んで火に入る夏の虫だ。

『もう、疲れたよ。1人ぼっちでさぁ、2年も。』

弱音でもいい。私は弱い。
自分を自分で元気づけて、まだ大丈夫だって。

それにも、もぅ疲れちゃった。

『さ、蝋燭消して〜!』

『早くしないと僕が消しちゃうぞ!』

辺りを見回せば、可愛い弟と優しい両親。

『わかったわかった。』

最後の、蝋燭。
もうロウがドロドロ溶けてケーキにかかっている。

『、、、ふーっ』

フッ、、と蝋燭の火は消えて。
寒いはずなのに、私の体は暖かかった。

だって、みんながいるから。

『ハッピーバースデー!』

『おめでとう〜!』

『ケーキ食べよう!』

ーーー

『ぅん、、た、、べよ、、ケーキ、、』

雪が彼女の体のラインに沿って降り積もる。

『ぉ、、、いし、、』

夢の中で永遠に。
その中だったら、キャンドルも永遠に。

彼女の顔は、大変安らかだった。

11/19/2023, 10:52:24 AM