窓の外から重いものが落ちる音がして目が覚めた。
いつのまにか日も短くなってしまって、いまが朝か夜か見分けがつかない。まぶたを無理やり上げてカーテンを開けると、昨日とはまるで違う銀世界に目を剥く。もうすっかり冬じゃないか。
冬の、肺を凍てつかせる空気が好きだ。吸った瞬間に体中霜が降りるような心地は寝覚めが良い。暖房を切って、脇の下で丸くなる猫と寄り添う時間が何よりも幸福だ。
降り積もった雪で窓の半分が埋まっていると、なんだか自身がもぐらか何かになった気分になれるのも楽しい。誰の足跡もない雪を踏みつけるたびに消耗する体力、感覚の無い手足や耳、身震いさえないほど冷え切った体。真っ白の視界の中でたった一人枝を燃やすと、そこだけ黒い煙が上がる。
それさえ何故か愛おしいのだ。
何の生命の匂いもしない季節。
冬が始まっていた。
空白を愛でる、静寂を聴く。
冬のはじまり
11/29/2024, 12:11:22 PM