あたたかく眩い光が天空から滝のように溢れていた。
どこからその光は降り注いでいるのか。
地上からではその始まりは見えないが、あまりにも神々しいその光に、周囲にいた人々が吸い寄せられるように集まっていく。
私もならって皆の後を追った。どこへ辿り着くのかわからないけれど、私ひとりだけ置いていかれたくはなかった。
どんっと、体が勢いよく前方から押された。よろけて後ろへ尻餅をつく。私は地面に座りこみ、何が起きたのかと呆然として前を見る。
『お前は来るな』
厳しい声が飛ぶ。
目の前に立ちはだかった人物が、私の背後を指差した。
『早く戻れ』
光を背にして佇む彼の人は、全身に暗い影が射していた。逆光となった表情は読めないが、告げる声には強い意志が込められていた。
『お前にはまだ果たすべき使命があるだろう』
私を突き飛ばした人物は、くるりと背を向ける。
「嫌だ!」
私は抵抗した。必死に手を伸ばす。
「私も連れて行って」
私の悲痛な叫びなど無視して、彼は光の方へと歩き出した。
座り込んで動けなくなった私を、後から来た人達が追い越していく。誰も私に手を差し伸べてくれない。
私はその場で踞り泣いた。
どうして私だけ置いていってしまうのかと。
そうして気づいたら、私は病院のベッドの上にいた。体には所々包帯が巻かれていて、後から聞けば私は大きな事故に巻き込まれた中での数少ない生還者だったらしい。
私はベッドに横たわったまま目を瞑る。
私に戻れと言ったあの人は、誰かを置いていかねばならなかったあの人は、どんな顔をしていたのだろう。眩い光の元へと行ったあの黒く翳った彼と彼らを思ったら、一滴の涙が頬を伝った。
【逆光】
1/24/2023, 10:55:48 PM