言葉にできない
あまりにも見ていられない惨状に、一人の少年が声を上げた。
「もう、やめにしましょう」
その声の主に皆の視線が一気に集まり、それと同時に審判は僕を見下ろした。
決着あり。下された決断の刹那、歓声が湧き上がる。
負けたという事実に首を縦に振りたくはなかった、そんな下劣考えすら、一度も許しはしなかったというのに。
身体が地面に張り付けられたように動けなくなってしまった僕に、彼が手を差し伸べる。
「良い試合だったよ、ありがとう」
立てるかい、と彼が問う。
僕は何も考えず彼の手を取った。
4/11/2024, 12:31:48 PM