初心者太郎

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—星に願いを—

「見つけた!ほら、あそこ!」

彼女の指差す先には、紅く光る大きな星が見えた。
元々、星になんて全く興味がなかったけれど、彼女が見たいというから、来た。
周りには、思っていたよりも人が多い。

「本当だ」
「綺麗でしょ?」
「うん、まぁ」

正直俺は、あの星を見てもなんとも思わなかった。目を輝かせて見ている彼女を見ると、本音は言えなかった。

「何か願い事しようよ」彼女が提案した。
「願い事?」
「うん、あの星に願いを込めると叶うって言われてるんだよ」

周りを見れば、多くの人が両手を顔の前に組み、願い事を星に伝えているようだった。

そんな彼女も、周りの人と同じように目を閉じ、俯いた。
その横顔が、綺麗だった。

(彼女とずっと一緒に居られますように)

そう心の中で願った。

顔を上げた彼女を見て「何をお願いしたの?」と俺は聞いた。

「これからも二人でいっぱい星を見られますようにって」

今が夜で良かったと思う。きっと今、顔は紅い。

「あなたは何をお願いしたの?」
「それは……、内緒」
「なんでよ、教えてよ!」
「いやだよっ!」

その場から逃げるように去ろうとすると、彼女は走って追いかけて来た。
二人の足音が、夜の街に響いた。

こんな二人の時間がいつまでも続けばいい、そう思った。
どうか願いを叶えてください、と紅い星に向かって、もう一度願い事をした。

お題:紅の記憶

11/23/2025, 9:15:00 AM