プレゼント
「別れましょ」
外の世界は煌びやかな電飾に彩られていて、あるはずのない暖かみすら感じる。
かえって今この空間は、暖炉の音は聞こえるのに急激に熱が逃げている。
背中に隠した白い包み紙にデコレーションされた小さな箱が、たったの一言で決して出してはいけない2人の重石になってしまった。いや、もう1人きりか。
なんで、なんて言葉も出てこない。
冗談だと思いたいのは、攻めてタイミングくらいだ。
消えないように、必死に薪をくべていた僕らの焔は、そうしていた時点でもう結末は見えていたのだ。
「何で何も言わないの」
隣で聞き慣れたはずの声は、聞いた事のない色で僕の前を通り過ぎる。
声までもが泣き乱れた彼女の言葉が、僕の世界から色を奪っていく。
貫いた沈黙の末尾、崩れる薪の音に負けそうな声で名前を呼ばれた。
じゃあね、といって扉を開けて出ていく時にようやく、いや久々に、ちゃんと彼女の顔を見ることが出来た。
最近彼女を見ることが出来ていなかったことに、あまりにも遅く気づいた。
このダイヤは、1人で持つには重すぎるよ。
僕は背中に引っかかっていた重石をぐっとポケットに押し込んで、彼女との大量の思い出というプレゼントボックスが溢れかえった部屋を飛び出した。
12/23/2024, 5:14:55 PM