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 「『誰よりも、ずっと』君を知っているよ」
「例えば?」
 彼に私のことどれくらい知ってる?と尋ねてみた。ただの好奇心で客観的な事が知りたくなったのだ。自分だとあまりに思い付かなくて。

「優しくて感情移入しては泣いてしまうところ、好きな食べ物は最後まで残して俺に分けてくれるし、良いことがあると真っ先に話してくれるね。怖い時は俺の服を握ったり。そうそう、この間は俺の服を着て寝ていたっけ」

 ぎくりとする。体格差がどれほどあるのかシャツを当てるだけでは実感が薄くて着てみた時のことだ。彼が泊まる用に何着か私の部屋に置いてあって取り出した。ダボダボで、着た瞬間に彼の香りに包まれて安心してしまい気が付いたらソファで寝ていた。起きたあとすぐに脱いだというのに彼は私が寝ている間にやって来て出ていったんだと知った。機嫌が良かったのはそういう…。

「爪はいつも綺麗に整えられてるね。…あ、背中のくびれ付近にホクロがあるよ。あと足の付け根にもあって、すごくセクシーだ」
 私の知っている部分と知らない部分が次々出てくる。ホクロがそんな所にあったなんて知らなかった。しかもそれって彼に体の隅々まで見られているという意味で。私が知っているのは彼の項にホクロがあるというくらいなのに…
「も、もう、大丈夫…」
「それに自分から聞いたのに恥ずかしがるところに…」
「もういいってば…!」
 彼の口を思いっきり抑えた。もごもご言ってる…。まだあるの?ぱっと手を離した。すると私が逃げないように力強く抱き締めた。

「っぷは…。君が思う以上に知ってるつもりだよ。自分の事が分からなくなったらいつでも聞いて。誰よりも君を見てる自信があるから」

4/9/2023, 11:55:48 PM