「残念なお知らせがある」
帰宅してそうそう毎回恒例の一言愚痴を告げにきた父。
不機嫌さを隠しもしないで職場での愚痴や家庭内の愚痴を子どもに語る姿はもう見慣れたものだ。
それに対して思うところもあるが、それなりの事情というやつがあることはこの家に生まれ育った私にはよくわかる。それぞれの心境なんて思いやれる優しさなど欠片もない切羽詰まった環境での扱いなんて考えるまでもない。
黙ったままぼんやりと父をみていると、わざとらしく大げさに溜め息をついて一言。
「お前は親ガチャに失敗したな」
それだけ言い残して部屋を出ていく父に私は何も言えなかった。だってそれは子どもが親に向けていう言葉だ。
あと私はその言葉が大嫌いなんだ。確かにいい家庭ではないかもしれないけど、ここまで育ててくれた恩をそんな言葉で踏みにじる気など一ミリもない。
―ああ、やっぱり私の言葉は誰にも聞こえないのか
やるせない気持ちなんて数え切れないほど味わってきたのに、いつまでもその苦みには慣れやしない。
私が親ガチャに失敗したのではなく、両親が子どもを産むか産まないかの選択を間違えたのだ。ガチャなんてするまでもない。そもそも産まなければ何もなかったのだ。
自分のせいにしたいのか、親のせいにしたいのか。それすらも分からないまま私はずっと『子ども』で居続けるしかないんだね。
【題:やるせない気持ち】
8/25/2023, 1:04:40 AM