〈遠雷〉
つい先程まで明るかったはずの空はいつの間にか暗くなっていた。時間が経つ速さに驚き、時計を見てみるとまだ午後2時だった。少し安心して電気を付け、また勉強机に向き合った時、ゴロゴロという音が聞こえて来た。久しぶりに聞く雷の音。カーテン越しに空が不気味に光るのを感じる。家に居るので大丈夫だとは思うが、本能からか不安を感じた。気持ちを紛らわせる為に光ってから音が届くまでの時間を数える。10秒、30秒、8秒、そして2秒。かなり近い。より不安が大きくなった。こんな事なら問題集のA君みたいなことやらなきゃ良かった。物理を選択するつもりもないから、音速の問題なんてもう解くことなんて無いだろうに。雷はまだ鳴っている。雨の音も激しくなる。毎年水不足気味のこの土地でこんなに激しく雷が鳴るなんて誰かが菅原道真を怒らせたのだろうか。
スマートフォンがピカッと光った。一瞬雷かと思ったが、フラッシュ通知をオンにしていたことを思い出した。ここ数ヶ月ほど会えていない、中学時代の友達からだった。「雷やばいね」その一言で、何だか温かい気持ちになった。「そうだね。怖いね」と返信する。でも、不思議ともう恐怖は消えていた。スマートフォン越しではあるが、人の温かさを感じて勇気づけられたような気がしたから。
8/24/2025, 6:16:38 AM