一目惚れなんてロマンスを、俺は信じていなかった。
だからこれは惚れたんじゃなくて、ただ一方的に、あてられただけだ。
灼熱だった。スポットライトが照らす彼女は、その場の何よりエネルギーを放っていた。
直視できないくらいに眩しいのに、目を逸らす事は決して叶わない。
されるがままに、焦がされた。
埃を被ったギターを思い出す。本当は、……本当は? 積もったのはそうして出した言い訳にもならない言葉達だと知っている癖に。
──歌えよ。
どうして。どうして。何で俺はここにいる? 何であのスポットライトの下にいないんだ?
真っ直ぐにこちらを射ぬく眼。挑発的に伸びゆく歌声。
何もかもに、内蔵の一切を焦がされた。
あれから何時間たった? 全く覚えちゃいなかった。いても立ってもいられなくなって、とにかく必死に、喉が枯れるまで声を上げた。
気が付けばスポットライトの下に立っていて。
気が付けば必死にギターを掻き鳴らしていた。
頭上の白熱灯は思ったよりも眩しかったし、観衆の眼は思ったよりもよく見えた。
あの日から火照ったままの体が、その実全く動かない。動かす為の熱量は内側に渦巻いているのに、指先の動きはもどかしいほど遅かった。
助けが欲しかった。指標が欲しかった。すがるようなみっともない目で、客席を見下ろした。
彼女が、観ていた。
忖度なんて無い、冷たい視線。羞恥に焼かれる。なんで自分はこんなことを? 臆病な部分が冷静ぶって、無性に泣きたくなった。今すぐに、このステージから駆け降りて、お目汚し失礼しましたと頭を下げてしまいたい。
でも、でもな。辞められないんだ。みっともなくたって、声に出して、叫んで、そうしろと体の内から何かが焼いた。
妬いて焼かれて、燃えていた。体は壊れるんじゃないかってくらい熱くて、暑くて、吹き出した汗が止まらなかった。
それでも声を張り上げる。上ずったかもしれない、音を外したかもしれない。足腰はガクブルだ。全部観られてる。まだここから降りない宣言だと、全部全部知られてる。
気のせいだろう。彼女が、愉しそうに笑った。
イカれてるかな。でも、確かに。
君になら消し炭にされても良いと思ったんだ。
【太陽のような】【Love you】
名も無き日。
2/24/2023, 3:56:07 AM