夏の忘れ物を探しに
もう夏休みも終わり学校が始まった。
夏休み中は都会からたくさんの人が来て賑わっていたのに、今は地元民しか居ない、また寂れた町に戻ってしまった。
学校帰り1人の男の人を見かけた。
ここら辺では見ないような、オシャレな服に帽子に鞄に。
まるで小説の世界から出てきたような独特な雰囲気のある人。一目見て都会の人だとわかった。
キョロキョロと辺りを見渡して何かを探しているようだった。
「…あの。なんか探しもんですか?」
おそるおそる声をかけると、男の人はふっと笑いかけた。
「あぁ、ちょっと夏の忘れ物を探しに、ね。」
「夏の…忘れ物。」
「うん。」
無我夢中でカメラのシャッターを切る彼にそれ以上話しかけられなかった。彼の独特な雰囲気に飲み込まれそうで怖かった。
彼の去った方を振り返って見ると、もう影も形も無かった。
「…忘れ物は見つかったんかな?」
9/1/2025, 11:33:08 AM