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『光と闇の狭間で』

君とゆっくり話をしよう。
水平線の彼方に太陽が沈むまで。

長く伸びた影で背伸びして、
岩礁を波打ち際まで攻めてみて、
海の上にできた光の道を指差して、
美しい空をカメラにおさめてさ。

明るい昼にはできない話を。
暗い夜には選ばれない話を。

本日の夕焼けは雲の色まで芸術的な感じだ。
燃えるような橙色の空に負けない、鈍色の雲。
物語の終盤で見る景色がこれなら、絶対不吉の前触れなのだけれど、今の気分なら悪くない。

海辺に並んで座って、
また見に来ようねって約束を交わす。

沈んでゆく夕陽は直視していられないほど眩しくて、
けれども目を逸らしたくないくらい輝いていた。
美しかった橙色もキャンバスの隅に追いやられ、
代わりに真っ暗な夜が空を染めてしまった。
きっとこれが”夜の帳”ってやつなのだろう。
今日の終わりを見るようで切ない気分だった。

……さて、そろそろ帰ろうか。
夜の海は真っ黒で、
夜の風は冷たいからね。

12/3/2024, 3:26:08 AM