ただ、必死に走る私。何かから逃げるように。
あと、どれだけ走ればいいんだろう。
浅くなる呼吸に、疲れきった足はもつれて、もう無理だと思うのに、それが後ろにいることを知っているから、逃げるように走り続けた。
でも、逃げ道がどこにもないことも、よくわかっていた。だって、逃げ込んだ先は巨大な搭だったから。上って、上って、上った先は行き止まりだと知っているから。
それなのに、最後まで抵抗したかった。抗っていたかった。逃げ続けたその先で、それでもそれに負けたくはなかった。
でも、それが言うんだ。
「でも、影は実体より大きくなれるでしょ?」
それに飲み込まれてしまう前に、そっと窓から足を踏み外した。
5/30/2023, 1:42:57 PM