未明

Open App

「夏」

今年、最後の夏を迎える
時の流れは早いもので
気づいたらもう高校三年生
君に片思いして二年半
"今年こそは"を繰り返して
引けない所まで来てしまった

今を逃せばもう二度と戻れない
そんな事は分かっている
分かっているつもりだった
不安ばかり気にして
後回しにして
のちのち後悔するのなんて
分かっている筈なのに

言葉を飲み込み
苦しくて仕方ないのに
吐き出すことが出来ない

このままじゃいけない
取り返しのつかない事になる

きっと、高校を卒業したら
疎遠になってしまうだろう
立ち止まっている時間はない

刻一刻と迫る別れから
目を背けそうになる

これは多分試練だ
意気地なしの僕への

小さな勇気を握りしめ
眩い光に必死に手を伸ばすけど
足りない、まだ届かない
そんな事をしているうちに
君がまた遠ざかっていく気がする

それは嫌だ
咄嗟に君の手を掴んだ
不器用に言葉を紡ぎながら
君に愛を伝えた
"君の事が好きだよ"
余りにも途切れ途切れな告白
とても不格好で
それでいて純粋な言葉たち
君の笑顔は
まるで陽だまりの様だった

今年の夏は終わりを迎えようとしている
あの日見た花火は、どんな時よりも
美しく見えて、記憶の片隅で輝いている
色褪せることなく

6/28/2024, 11:53:12 PM