「お前今、自転車に乗ってる?」
イアホン越しに声が聞こえる。
「こんないい天気の日に乗らないといつ乗るんだよ。」
そう言い返した。
「ってことはずぶ濡れになってんのか。」
「そうだねぇ。めちゃくちゃ気持ちいいよ。
心が洗われる。」
「授業で学んだけどさ、綺麗な水ではねぇよ。」
「大丈夫、向う先は温泉だ。」
「なんて客だよ。風呂入る前から浸かってるようなもんじゃねぇか。」
「温泉入っても長くて小一時間ぐらいだろう。
帰りはどうすんの?多分雨やまないよ?」
「ん〜、だって君がいるじゃないか
ってことでよろしく」
そう言っても通話を切った。
----------------------
「明日自転車取りに来いよ」
「わかってる、ありがとうな」
「ん〜、お互い様やろ。」
--------------------
「いつもならこのパターンだったんだけどなぁ。
あっちでも元気にしてるかな。」
「君の心の現れかい?」
「あの日から雨の日に自転車はやめたよ。」
「また、ね。」
そう僕は、虹に語りかける。
8/15/2023, 3:07:20 AM