夢見心地で彼の隣を歩く。夢にまで見た彼とのデート……。
これが本当に夢だと気付いた時、私はある和歌を思い浮かべた。
思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢としりせば 覚めざらましを
これは小野小町が詠んだ歌で、「あの人のことを思いながら寝たから、あの人のことを夢に見てしまったのかな。 もし夢だとわかっていたら目を覚まさなかったのに」みたいな意味だったと思う。
私は幸運にもこれが夢であると気付いた。ならばこのまま目覚めずに、彼とのデートを堪能したい。
けど直後にこうも思った。
夢の中で夢だと気付くことを明晰夢というらしいけど、明晰夢を見てから目覚めると疲れを感じてしまうんだそうだ。だから明晰夢を見た時は一旦起きてしまった方が良いんだとか。
せっかく彼とデートしてるんだから目覚めたくない。けど明日に疲れを残すのも嫌。どうしたものか……。
そうこう考えていたら、思考の終わりを告げる目覚まし時計のベルが鳴った。
起きてからも印象的な夢の中の彼の笑顔を思い出してしまう。
あれはもしかして正夢だったり?いやいや、そんなはずもないか……。
今日も私は夢見る少女のように、現実の彼のことを目で追ってしまうのだった。
6/8/2025, 4:20:29 AM