NoName

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小高い丘の上に立つ一本の木。
太い幹にもたれかかり、空を仰いだ。
青々とした葉の隙間から降り注ぐ光の粒に目を細める。
あの時も、こんな風にここで君を待っていた。
約束などしていない。
君が嫌うから。
―――そんなものなくたって、僕たちは出会えるんだよ。
まるで当然のように言う。
だから、私も当然のように感じてしまう。

「ほらね」

懐かしい声に、頬が緩んだ。

「僕たちはちゃんと出会えるんだよ」

君が勝ち誇ったように笑うから、私は幸福に包まれる。

2/11/2024, 12:26:26 PM