いぐあな

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300字小説

蝙蝠の王

「テーブルの食器は東洋の白磁で整えたか?」
「はい」
「食材は海のものを仕入れました」
 西の大国の王の訪問の準備に城の者がおおわらわしている。
「……媚びへつらう真似を……」
 警備の兵士の中には苦虫を噛み潰したような顔でそれを見ている者もいる。
 しかし、たとえ間違いだったとしても、この世界情勢のなか、大国二国に挟まれた小国の我が国が一年でも生き延びる為には双方に媚びるしかないのだ。
 傍系の叔父の家は国の外に出て、この国が強く栄える道を探っている。それが可能となったとき、我が王家は弱腰の蝙蝠外交ばかりの無能だと嘲笑われるだろう。
「お着きになりました」
 そんな未来が来ることを祈りながら、私は来客を迎えに向かった。

お題「たとえ間違いだったとしても」

4/22/2024, 12:25:55 PM