ミミッキュ

Open App

"二十歳"

 コンビニで昼食を買い、外に出て早歩きで帰路に着く。
「早く帰ってハナに飯やらねぇと」
──きっと今頃『まだかまだか〜』って鳴き喚いてるだろうな……。
 ハナの食いっぷりは、成猫用のドライフードを与え始めた辺りからパワーアップしていた。子猫用のを与えていた時より減りが早く、心做しか食べ終わるスピードも早くなった気がする。
 初めてご飯をあげた時から食いしん坊だったが、成猫用の方が味が付いている上に育ち盛りっていうのもあって、食欲に拍車がかかったようだ。今ではとんでもない食いしん坊モンスターと化している。
──成猫用のドライフードに変える時、食べてくれるか心配してたのに……。
 無駄な心配に終わったが、全く食べてくれないよりはマシだ。
 すると、数本向こうの通りから賑やかな声が聞こえてきて、そちらを見る。遠目に色鮮やかな和服に身を包んだ大勢の人が見えた。
──あぁ、確か今日か。
 この前見た町内掲示板で『二十歳を祝う会』開催のポスターに書かれていた日程を思い出す。時間までは見ていないが時間は全国同じだろうから、もう終わった頃だろう。
──俺は、当時まだ大学生で勉強勉強で時間無くて、結局スーツで出たっけ。
 二十歳の頃の自分を思い出して、その場に立ち尽くしながら懐かしさに浸る。だがすぐに、はっ、と我に帰って頭を振る。
──いけない。早く帰ってハナのご飯と、午後の準備しないと。
 遠目で和服姿の二十歳の人達の集まりを見ていた顔を進行方向に向け、小走りで帰路に着いた。

1/10/2024, 12:52:14 PM