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“愛があれば何でもできる?”


愛するが故になんでもしてしまった人の背中をずっと真後ろで見てきた。
そして俺にはその人の血が流れている。
俺は誰も愛さないし、愛してはいけないと記憶の中の父親の歪んだ横顔を思い出しては強く戒めてきたというのに。
気づけば俺の隣には彼女がいた。
こんな俺の何が良いのか、世話焼きな彼女を疎ましく思っていたはずなのにうっかり彼女を愛してしまった。
愛してしまえば、次は彼女を失うことが怖くなってきっと俺は彼女がいなくなったら父親のようになんでもしてしまうだろう。

彼女がいなくなった世界で世界を呪い周りを傷つける自分の姿を夢にみて、全身冷や汗をかきながら飛び起きる夜は少なくない。
どうか俺を置いていなくならないで。と隣で眠る彼女を腕に閉じ込めると、眠っていたはずの彼女はゆるりと瞼を持ち上げて俺の頭をぶっきらぼうに撫で回した。

情けない顔するな、私がいなくなるときはちゃんとお前も連れて行くから。

寝ぼけて舌っ足らずだけどしっかりと俺の目をみて告げた彼女は、またうつらうつらと夢の世界へ戻ってしまう。

愛があれば何でもできる。
でも愛しているから、何もできない。

5/16/2024, 5:04:06 PM