「なにが?」
それに返せるものは何も無くて、その言葉に対する答えだけを必死に頭の中で探していた。
「えっと…」
あー。えー。えっと。話せるのはその3単語だけで、繰り返す度に彼女の表情が曇っていくのが感じ取れた。
顔を見なくてもわかる。それ程付き合いが長かったから。
「ごめん」
結局はその言葉で場面を締めてしまう。
それは、いつも許されると思っているから。
「もういいや」
意外な言葉に驚愕しつつ顔を上げるも、もうそこに彼女の姿はない。
運動もろくにしたことが無い俺が走る姿は、さぞかし恥ずかしい事だろう。それでも彼女を追いかけるのは、多分まだ好きだからだと思う。確信は持てない。
でも、彼女には追いつけなくて。
「あ」
今初めて、彼女に捨てられたんだと気づいた。
6/8/2024, 3:08:00 PM